タッチ


  
ティファニー・フィールド 著
佐久間 徹 監訳

健康や発達や幸福にとってタッチやタッチセラピーがいかに重要か、その認識に貢献するのが本書の目的です。

A5判・160ページ 定価1,680[本体1,600円+税]
ISBN 978-4-86108-047-0 C3011 ¥1600E
2008. 1. 10  第1版 第1刷


もくじ



第1章 タッチの欲求
第2章 コミュニケーションとしてのタッチ
第3章 発達とタッチ
第4章 タッチの欠乏
第5章 タッチは脳へのメッセージ
第6章 タッチの治療効果
第7章 赤ちゃんへのマッサージ
第8章 問題の解決や改善のためのマッサージ
索引
あとがき



監訳者あとがき
 訳者らは、関西福祉科学大学で応用行動分析に立脚する広汎性発達障害児(自閉症児)の指導を勉強しているグループである。行動分析のカナメをなすのは有効な強化子を手に入れることである。さまざまな試みから、自閉症児に皮膚刺激が有力な強化子として機能することがわかってきた。自閉症児の親たちに皮膚刺激の重要性を説得するのに、本書でも数カ所で引用されているA・モンタギュー著「タッチング」(佐藤信行他訳、平凡社)を読んでもらっていた。しかし、この本は初版の19OO年以来ずいぶん増刷をかさねたが現在では絶版になっている。代理がつとまる本を探していたところ、本書が見つかった。さっそく翻訳権を入手し訳に取りかかったが、監訳者の病気もあり、とうとう今日になってしまった。モンタギューと視点は異なるものの皮膚刺激の重要性を説いている。
 自閉症児は一般に、人から体を触られるのを嫌うが、人の嫌悪性をなし崩しに取り除きながら皮膚刺激を段階的に増強していくと、人による皮膚への刺激を喜んで受け入れるようになる。そうなると、適応行動にいわゆるnatural reinforcing contingencyが働くようになり、加えて模倣行動を形成していくと、言語の獲得、身辺自立、社会性の発達などに大きな変化を得ることができる。そうした過程で朝晩、皮膚刺激を続けていくと、副次的にさまざまな効果があることがわかった。
 たとえば、本書にも書いてあるように、アトピーの症状が大幅に緩和する。もちろん症状部位を避けて、健康な皮膚の部分をくまなくこする。特に症状部位の周辺を丁寧にこする。症状の改善は、おそらく、刺激によって皮膚代謝が亢進される結果であろう。
 本書では触れられていないが、皮膚刺激を自閉症児に試みているとしばしば偏食の改善という効果を経験する。感覚統合療法などで強調されているように、皮膚刺激によって感覚のアンバランスが改善されることによる効果と思われる。
 また、自閉症児に筋弛緩を誘導するようなマッサージができるようになると、自閉症児のかなりきつい緊張あるいは不安を削減できる。不安の低減で、睡眠リズムができてくる、こだわりが緩和され、パニックの解消など、大きな変化が生ずる。
 ティファニー・フィールド女史が強調しているような効果をわれわれは、自閉症児で同様に経験している。本書をきっかけに、子育てにたずさわる人たちが一人でも多く、子どもの心身の発達に皮膚刺激(タッチ)が重要な役割を果たしていることに気づいてくれることを願っている。

 本書の翻訳は下記の諸君の訳に手を加えてまとめてものである。本原稿作成当時は私のゼミ生だったが、現在ではそれぞれの職場で仕事をしている。

第3章 二井貴子 関西福祉科学大学大学院研究生
第4章 酒井亮吉 子供の城協会療育センター
第5章 山下佳代 キリスト教ミード社会舘
第6章 小西弾未 あぜくら福祉会尼崎あぜくら作業所
第7章 小野 真 キリスト教ミード社会舘
第8章 岸本雅志 社会福祉法人朱鳥会知的障害者更生施設あけみどり


  2006年4月                     佐久間 徹


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