ジェームズ・E・メイザー 著 磯 博行 / 坂上貴之 / 川合伸幸 訳 学習は科学的心理学の基礎をなす部分である。普遍原理や多くのトピックスを含んでおり知的興味が尽きない。本書は読者に学習と学習行動のもっとも基本的な原理に慣れ親しんでいただくために書かれた。 B5判・444ページ 定価4,200[本体4,000円+税] ISBN 978-4-86108-045-6 C3011 ¥4000E 2008. 6. 20 第3版 第1刷 |
もくじ
日本語版によせて
序 文
第1章 学習と行動の心理学 1
学習の普遍的原理の探究 2
科学的理論の性質 3
学習への行動的・認知的アプローチ 11
自由意志、決定論とカオス理論 16
第2章 単純観念、単純連合、単細胞19
観念の連合についての初期の理論19
記憶についてのEbbinghausの実験23
連合主義に関連した生理学的事実と理論26
第3章 生得的行動パターンと馴化 37
目標指向システムの特性 37
反射 38
向性と定位 40
行動の系列 41
ヒトの生得的能力と素質
馴化 45
第4章 古典的条件づけの基本原理 57
Pavlovの発見とその衝撃 57
条件づけの基本的な現象 65
古典的条件づけにおけるタイミングの重要性
高次条件づけ 75
実験室外での古典的条件づけ 76
第5章 古典的条件づけの理論と研究 87
連合学習の理論 87
連合の類型 100
古典的条件づけにおける生物学的制約 104
条件反応の型 110
古典的条件づけについての生理学的研究 114
第6章 オペラント条件づけの基本原理 121
効果の法則 121
反応形成、もしくは逐次的接近の手続き 129
B. F. Skinnerの研究 133
オペラント条件づけにおける生物学的制約 138
第7章 強化スケジュール:実験的分析と応用 147
時々刻々の行動の記録:累積記録器 147
4つの単純なスケジュール 147
強化スケジュールでの遂行に影響を与える要因 155
強化スケジュールの実験的分析 158
オペラント条件づけの応用 162
第8章 回避と罰 171
回避 172
学習性無力感 182
罰 184
行動療法における行動の逓減 189
第9章 オペラント条件づけの理論と研究 199
反応の役割 199
強化子の役割 200
バイオフィードバック 207
何が強化子になるかをどのようにして予測できるのか? 209
行動経済学 216
第10章 刺激性制御と概念形成 223
般化勾配 223
刺激性制御は絶対的か関係的か? 228
行動対比 233
“無誤”弁別学習 235
弁別訓練後の学習転移 238
概念形成 240
行動修正における刺激性制御 246
第11章 比較認知 251
記憶とリハーサル 251
時間・数・系列パターン 264
言語と推理 271
第12章 観察による学習 281
模倣の理論 281
模倣の生じやすさに影響を与える諸要因 288
観察学習とオペラント条件づけの相互作用 289
メディアによる暴力と攻撃的行動 290
観察を通して何が学習されるのか? 292
行動療法における模倣 295
結論:観察による学習の洗練された技法 299
第13章 運動技能の学習 303
運動技能の多様性 303
運動学習と行動遂行に影響する変数 304
運動技能学習の理論 312
運動系列の学習 319
第14章 選択行動 327
マッチングの法則 327
選択行動の理論 336
自己制御での選択 345
その他の選択場面 352
Glossary
References 359
著者索引 393
事項索引 402
訳者あとがき 419
著者・訳者紹介 420
訳者あとがき
2006 年末に英語版の第6版が出版されたことを知った。第5 版の翻訳は内容が第4版とさほど変わらない印象を得ていたために見送った経緯があるので、どれどれと中身を見比べてみた。驚くほど簡潔になっている。以前の版では、ところどころで「これこれは、実はこう言うことで」というような言い訳のような説明があったが、第6版ではそのあたりはすっかり削除されている。また、引用文献も大幅に更新されている。「究極の」学習心理学の教科書という感じなので今回はパスするわけにはいかない。
というわけで、川合氏、坂上氏、磯の以前と同じ3名で日本語版第3版を出そうということになった。Mazur 先生の早業にはかなわないが、何とか2版ごとに改訂するというペースは定着したようである。1年がかりの作業であったが、やりとげることができた。日本の心理学界はこの10年間の臨床ブームから少し熱が下がったようである。基礎の心理学を履修せずとも大学院で臨床を学ぶことができる、というおかしな現実はまだ残っているが、学生たちは次第に基礎の大切さを感じるようになっている。学習心理学は、どの応用分野を学ぶにあたっても、最も重要な科目の1つである。基礎心理学を学ぶ学生はもちろんであるが、将来応用分野を目指す学生たちに本書を読むことをぜひお勧めする。
2008 年5月2日
訳者代表 磯 博行