インクルーシブ セラピー

敬意に満ちた態度でクライエントの抵抗を解消する26の方法


  
ビル・オハンロン 著
宮田 敬一 監訳
菊池悌一郎・青木みのり 訳

インクルーシブセラピーの原理と方法論について書かれたもっとも短い入門書。様々な理論的基盤を持つ多くのセラピストに必要とされる方法で、読みやすい小型の本として刊行された。

A5判・156ページ 定価1,890[本体1,800円+税]
ISBN 978-4-86108-043-2 C3011 ¥1800E
2007. 10. 20  第2版 第1刷


もくじ


序章

1.インクルーシブセラピーの3つの基礎的方法
  許可法
     1.1 許可を与える
     1.2 しなくてもよいという許可を与える
   セオリー・ブレーク:命令
     1.3 一度に両方の許可を与える
     1.4 ノーマライズする
  陰陽法
     1.5 正反対、あるいは矛盾した感情を包含する
     1.6 自己や他者の正反対、あるいは矛盾した側面を包含する
     1.7 付加疑問文を用いる
   セオリー・ブレーク:「そして」の重要性
     1.8 矛盾話法や反対語の並置を用いる
     1.9 「抵抗」を認める
     1.10  「抵抗」や問題を含める
  「あるいは別のもの」法
     1.11  正反対の可能性を包含し認める
   セオリー・ブレーク:私たちの知識の限界
     1. 12 逆説的な努力を用いる

2.関心と変化
     2.1 過去時制で認める
     2.2 全体的ではなく部分的な反応で認める
     2.3 現実や真実の申し立てを知覚に変えて認める
   セオリー・ブレーク:3Dモデルとインクルーシブな自己
     2.4 問題を望みに換えて応答する
     2.5 変化への期待や可能性を加えながら認める

3.スピリチュアリティとインクルーシブな自己
     3.1 身体とつながること
     3.2 より深い自己、魂、精神とつながる
     3.3 他の存在とつながる
   セオリー・ブレーク:つながりによってスピリチュアリティに至る7つの道
     3.4 グループやコミュニティとつながる
     3.5 自然とつながる
     3.6 芸術を通してつながる
     3.7 神、宇宙、より高次元の力などの超越的存在とつながる

4. 頑固者:包括性(インクルージョン)を内的・外的葛藤を扱うために利用する
     4.1 自己への思いやりを引き出す
     4.2 他者への思いやりを引き出す

5. インクルーシブセラピスト、もしくは、失礼、私のカルマ(業)があなたのドグマ(教義)を轢いてしまいました

6.あるいは別のもの:結語



監訳者あとがき

 著者のオハンロンさんは、人の可能性を拓くコミュニケーション方法として、すでに「可能性療法(誠信書房)」を提示し、世界のあちこちで大きな反響を呼んでいます。本書はその発展として新たに提唱された、インクルーシブセラピーを紹介したものです。彼は、人の肯定面だけでなく、苦しみ、痛みといったネガティヴな面にも関心を向け、セラピストがそれらの両面を認め、包含して返すというコミュニケーションスタイルを開発しました。この基礎は彼の師である、偉大なセラピスト、ミルトン・エリクソンのコミュニケーションにあります。
 このインクルーシブセラピーはまた、東洋の考え方、特に禅や陰陽の考えと合い通じるところがあります。そして、本書の後半には、個人を越えて人は他者、コミュニティ、自然、宇宙とのつながりの中で生きているというスピリチュアリティの考え方と、そのつながっているという感覚をもたらすためのコミュニケーションスキルも提示されています。
 彼はインクルーシブセラピーの対象として、境界例、分離や心的外傷後ストレスの問題で悩んでいる人たちをあげ、かれらにこのコミュニケーションスタイルが特に有効であると述べています。本書を読み進めますと、彼の人に対する優しさと慈悲のこころがよくわかると思います。
 筆者も90年代後半から東洋的な考えに関心を抱き、学んではきましたが、その考えをいかに実際の臨床で生かすかについては暗中模索の状況にいました。その中で、オハンロンさんの可能性療法のワークショップやこの原書と出会い、インクルーシブな考え方とその実践的なコミュニケーション方法にとても感心しました。大学の演習で原書を使い、読んでいたところ、学生相談において、ブリーフセラピーを実践している九州工業大学の菊池梯一郎さんから、すでに読んでいてとてもおもしろいので、本書を訳出したいという相談をもちかけられました。そこで、訳出にあたり、もうおひとり、東京で熱意をもってブリーフセラピーの研究と臨床に取り組んでいる日本女子大学の青木みのりさんにも訳者として入っていただき、ここに出版の運びとなりました。ただ、この間、私の監訳の作業が遅れたために、出版までにずいぶん時間がかかりました。終始、暖かいご支援をいただいた、二瓶社の吉田三郎社長さんにこころより感謝申し上げます。
 
       盛夏を迎えて        
       宮田敬一


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