心理学

  
中城 進 編
三好 環/粕井みづほ/坂井 誠/木村竜也/土田こゆき/中島弘徳/與久田巌 著
心理学を初めて学ぶ人のための入門テキスト。専門学校や短大、大学で心理学を専門としないけれども、基礎教養として心理学が大切な課程は少なくない。本書はそういった課程の学生に向けたやさしい入門の教科書。
A5判・216ページ 定価[本体1800円+税]
ISBN 4-931199-99-2 C3011 \1800E
2003. 3. 1 第1版 第1刷

目 次

はしがき iii
もくじ v
第1章 親子関係 1
 第1節 親子関係に影響を与える要因 1
  1.親自身の要因 1
   (1)親自身の被養育体験 1
   (2)親の思想・信条・方針 2
   (3)親の養育方法 3
   (4)親の養育態度 4
   (5)妊娠・分娩体験の有無 5
  2.家族・家庭の要因 5
  3.物理的な要因──建築構造物── 5
  4.所属する文化・慣習・規範という要因 6
  5.妊娠中の日常の出来事という要因 6
 第2節 胎生期の親子関係 7
  1.妊婦の心的過程 7
  2.妊娠中のストレスと胎児への影響 11
  3.胎児の聴覚と母親の声の学習 12
  4.母親の子どもに対する愛着の成立 12
   (1)妊娠の計画 12
   (2)妊娠中 13
   (3)分娩後 13
 第3節 新生児期の親子関係 14
  1.接触行動 14
  2.目と目との触れ合い 14
  3.サイクルの交換 15
  4.エントレインメント 15
  5.母乳哺育 15
  6.匂いの交換 16
 第4節 愛着の親子関係 16
  1.愛着とは 16
  2.何故に愛着が生ずるのか 17
  3.愛着の段階 18
  参考文献 19
第2章 発達:発達論争と初期経験 21
 第1節 発達を巡っての論争 21
  1.「生得説−経験説」論争 21
  2.「遺伝説−環境説」論争 22
   (1)遺伝説を支持する家系研究 22
   (2)環境説を支持する文化人類学 23
   (3)輻輳説――遺伝も環境も―― 24
  3.「成熟優位説−学習説」論争 25
   (1)学習説 25
   (2)成熟優位説 25
 第2節 発達初期における経験の重要性の発見 27
  1.ホスピタリズム 27
   (1)ホスピタリズムとは 27
   (2)ホスピタリズムの症状 29
   (3)ホスピタリズムの発生原因 29
  2.インプリンティング 30
   (1)インプリンティングとは 30
   (2)インプリンティングの特徴 30
   (3)インプリンティングの役割 31
 参考文献 32
第3章 発達:胎児期から児童期まで 33
 第1節 運動機能の発達 33
  1.胎児期の運動機能の発達 33
   (1)胎芽期の運動発達 33
   (2)胎児期の運動発達 33
  2.新生児期の運動機能の発達 34
  3.乳幼児期の運動機能の発達 36
 第2節 言語機能の発達 37
  1.新生児期の言語機能 37
  2.乳児期の言語機能 37
  3.幼児期の言語機能 38
 第3節 認知機能の発達 40
  1.新生児の認知発達 40
   (1)新生児の視覚能力 40
   (2)新生児の聴覚能力 40
   (3)新生児の味覚能力 42
   (4)新生児の嗅覚能力 42
   (5)新生児の学習能力 42
   (6)新生児の空間理解能力 43
   (7)新生児の社会的能力 45
  2.乳児期の認知発達 46
   (1)注視反応 46
   (2)奥行知覚 48
   (3)対象の永続性 48
   (4)微笑行動と人見知り 50
  3.幼児期の認知発達 50
   (1)感覚運動期(誕生〜約2歳) 51
   (2)前操作期(約2歳〜約7歳) 52
   (3)具体的操作期(約7歳〜約12歳) 53
   (4)形式的操作期(約12歳〜  ) 54
 参考文献 54
第4章 発達:青年期から成人期 57
 第1節 青年期 57
  1.青年期とは――青年期の概観―― 57
   (1)モラトリアムの時期 57
   (2)青年期の全般的特徴 57
   (3)青年期の発達課題――自我同一性の確立―― 58
   (4)青年期の区分 58
  2.青年期前期(思春期――小学校高学年〜中学生時代)〜青年期中期(高校生時代) 59
   (1)個体内の心理 59
   (2)対人関係 62
  3.青年期後期 65
   (1)アイデンティティの確立 65
   (2)恋愛 66
  4.日本における最近の青年の意識傾向 66
  5.問題行動 68
   (1)学校にかかわる問題行動 68
   (2)個人的な問題行動 69
 第2節 成人期 70
  1.成人期前期(17〜40歳) 71
   (1)成人への過渡期(17〜22歳)――成人期前期への移行―― 71
   (2)大人の世界へ入る時期(20〜28歳) 71
   (3)30歳の過渡期(28〜33歳) 71
   (4)一家を固める時期(33〜40歳) 72
   (5)成人期前期の発達課題――親密性―― 72
  2.成人期中期(40〜60歳) 72
   (1)人生半ばの過渡期(40〜45歳)――中年期への移行―― 72
   (2)成人期中期(中年期・壮年期)(45〜60歳) 73
   (3)成人期中期の発達課題――生産性(世代性・生殖性)―― 73
  3.成人期後期(老年期) 74
   (1)知的能力の発達 74
   (2)社会的関係 74
   (3)身体的変化 75
   (4)死の準備 75
   (5)成人期後期の発達課題――統合性―― 76
   (6)統合に向けて 76
 参考文献 77
第5章 知  覚 79
 第1節 感覚と知覚 79
  1.感覚・知覚・認知 79
  2.感覚の種類 81
  3.感覚の特性 82
   (1)適刺激・不適刺激 82
   (2) 感覚の範囲 83
 第2節 知覚と客観的物理的世界とのズレ 87
  1.私たちの知覚 87
  2.感覚段階での選択 87
  3.錯覚 88
   (1)視覚における錯覚(錯視) 89
   (2)運動感覚に関する錯覚 91
   (3)触覚的錯覚 91
   (4)要求や不安による錯覚 91
   (5)感覚に類似する体験 91
  4.恒常性 92
   (1)大きさの恒常性 92
   (2)明るさの恒常性 93
   (3)色の恒常性 93
   (4)形の恒常性 93
   (5)方向の恒常性 93
   (6)速さの恒常性 93
   (7)音の恒常性 93
  5.統合 94
   (1)図と地 94
   (2)群化 96
  6.知覚的構え 97
   (1)経験の効果 97
   (2)動的知覚 98
 参考文献 99
第6章 学  習 101
第1節 学習とは何か 101
 1.学習の定義 101
 2.学習の種類 102
 3.連合理論と認知理論 102
第2節 学習の理論 104
 1.古典的条件づけ 104
(1)パブロフの実験 104
(2)強化と消去 105
(3)般化と分化 105
(4)高次条件づけ 106
 2.道具的条件づけ 106
(1)スキナーの実験 106
(2)強化と罰 107
(3)強化スケジュール 108
(4)弁別刺激と三項随伴性 108
 3.モデリング 109
(1)バンデューラの実験 109
(2)モデリングによる学習過程 109
(3)モデルの提示方法 110
第3節 学習に関係する諸問題 111
 1.レディネス 111
 2.動機づけ 111
 3.生物学的制約 112
 4.集中練習と分散練習 112
 5.全習法と分習法 112
 6.学習曲線 113
 7.学習の転移 113
 8.記憶 113
 参考文献 114
第7章 動機づけとフラストレーションと情緒 115
 第1節 動機づけ 115
  1.動機づけとは何か 115
  2.動機づけの機能 117
   (1)活動性の高揚 117
   (2)方向づけ 117
   (3)強化 117
  3.動機の種類 118
   (1)生得的動機(1次的動機) 119
   (2)社会的動機(2次的動機) 123
   (3)内発的動機づけ・外発的動機づけ 127
 第2節 フラストレーション 128
  1.フラストレーションと適応 128
  2.フラストレーションとコンフリクト 128
  3.フラストレーションと防衛機制 130
 第3節 情 緒 133
  1.情緒とは何か 133
  2.情緒の種類 134
  3.情緒の発生 136
   (1)発生の理論 136
   (2)情緒の般化 137
 参考文献 138
第8章 性  格 141
 第1節 性格とは 141
  1.性格とパーソナリティ 142
  2.性格の構造 142
  3.性格の一貫性 143
 第2節 性格のとらえ方 144
  1.類型論 144
  2.特性論 148
 第3節 性格測定の方法 150
  1.観察法と面接法 150
  2.テスト法 151
   (1)質問紙法 152
   (2)投影法 152
   (3)作業検査法 153
  3.テスト・バッテリー 154
 第4節 性格の形成 154
  1.内的要因:遺伝の要因 154
  2.外的要因:環境の要因 155
   (1)家族 155
   (2)社会 158
  3.自己形成の要因 159
  4.一回性の要因 160
 参考文献 160
第9章 適応と不適応 163
 第1節 適応と不適応とは 163
  1.適応とは 163
  2.不適応とは 164
   (1)神経症と心身症 164
   (2)適応障害 165
 第2節 心の揺らぎ――適応への影響 166
  1.欲求不満 166
  2.藤 168
  3.防衛機制 168
  4.危機と適応のプロセス 168
 第3節 ストレスと適応 170
  1.ストレスとは 170
  2.ストレスへの対処 173
   (1)ストレスの評価とコーピング 173
   (2)ソーシャル・サポート 173
   (3)ストレス・マネジメント 174
 参考文献 175
第10章 心理療法 177
 第1節 心理療法とは 177
 第2節 心についての理論 178
  1.精神分析学 178
  2.行動療法 179
   (1)古典的条件づけ 180
   (2)オペラント条件づけ 180
   (3)モデリング 180
  3.クライエント中心療法 181
  4.認知行動療法 181
 第3節 治療理論 182
  1.精神分析療法 182
  2.行動療法 183
  3.クライエント中心療法 184
  4.認知行動療法 185
 第4節 心理療法が可能となる基本条件 186
 第5節 心理療法の過程 187
 第6節 各種の技法 188
  1.リラクセーション法 188
  2.コミュニケーション技法 189
   (1)傾聴技法 189
   (2)沈黙技法 190
 第7節 心の専門家になるために 191
 参考文献 192
第11章 社会と人間 195
 第1節 個人内過程 195
  1.社会的認知 195
   (1)対人認知 195
   (2)対人認知の歪み 196
   (3)ステレオタイプ 197
  2.社会的態度 197
   (1)態度とその機能 197
   (2)説得的コミュニケーションによる態度変容 198
   (3)説得の技法 199
 第2節 対人関係 200
  1.自己 200
   (1)自己の4側面 200
   (2)自己の諸概念 200
   (3)自己の表出 200
  2.対人魅力 201
   (1)対人魅力の規定因 201
   (2)異性関係における対人魅力 203
  3.対人関係と健康 204
   (1)ソーシャル・サポートの種類 204
   (2)ソーシャル・サポートの効果 204
   (3)ソーシャル・サポートの限界 205
 第3節 個人と集団および集団間関係 205
  1.集団内過程 205
   (1)集団規範 205
   (2)集団の中の個人 206
   (3)集団による意思決定 206
   (4)リーダーの役割と集団 207
  2.集団間関係 207
   (1)競争と偏見および差別 207
   (2)集団間差別の解消 208
 参考文献 208
 

はしがき 
 心理学をはじめて学ぼうとする人たちのために、私たちは心理学の入門書を作成しました。本書におきましては、私たちは人間の『心』というものに焦点を当て、人間の『心』を対象として様々な考察を加えて、『私』という人間の『心』を分かり易く解説することを試みました。しかしながら、実際には、人間の『心』を知るという作業は至難の業です。特定の人間の『心』を知るという作業であっても案外に難しいことです。ある人間を充分に理解したと思っていても、次の日にはその人間の行動や会話から「あの人の心はよく分からない」と私たちは思い到ることもよくあります。ましてや、一般論として人間の『心』を知るという作業は異様な程の困難が伴うものです。人間一般の『心』を探求することをはじめると、ある時には私たちは『心』についての知識を握り締めたと思うのですが、その刹那に、それらの知識は私たちの手のなかからするりと滑り落ちていきます。
 一体『心』とは何なのでしょうか。『心』というものは、まるで霞がかかっているかのようです。それでも、さらに問いを深めていくと、『心』の本質、『心』の発生過程、『心』のメカニズム、『心』の病気、『心』の変容過程のことについては、私たちはほとんど何も知り得ないのではないかという思いにさえ取りつかれます。それでも、私たちは「『心』とは何か」とか「『私』とは何か」という問いを発し続けざるを得ません。多くの人が自身や家族や友人の“心”を日常の生活のなかでそれとなく自分流のやり方で探求して来たことでしょう。しかし、直観的な自己流では、確かにそれなりの成果をあげられるのも事実でしょうが、すべての人に通ずる共通の認識を求めようとする学問的・組織的な探求方法ではありません。
 『心』とは何なのか。『心』の本質、『心』の発生過程、『心』のメカニズム、『心』の病気、『心』の変容過程という諸々の問題を解こうとして、『心』の学問としての心理学が誕生し、そして発展して来ました。学問的・組織的に探求が進められている心理学を学ぶことによって、『心』についての私たちの見方が豊かになることは間違いありません。本書では、学問としての心理学の成果を紹介しております。それは、厳密に言うのであるのならば、真相そのものの紹介というのではなく、真相を探求する途上での仮の説の紹介ということです。それらの知識を切り口としてあるいは刺激として、読者には、さらなる探究を進めて頂きたいと思っております。
   2002年11月1日
執筆者代表 中城 進


[著者紹介]
中城 進 なかじょう すすむ
畿央大学健康科学部教授
大阪市立大学大学院生活科学研究科生活福祉学専攻後期博士課程単位取得退学
担当:編者、第1章、第2章、第3章

三好 環 
みよし たまき
畿央大学短期大学部助教授
早稲田大学大学院修士課程修了
担当:第4章

粕井みづほ 
かすい みづほ
大阪国際大学・大阪国際短期大学非常勤講師
大阪市立大学大学院生活科学研究科生活福祉学専攻後期博士課程単位取得退学
担当:第5章、第7章

坂井 誠 
さかい まこと
愛知教育大学養護教育講座教授
関西大学大学院文学研究科修士課程修了
担当:第6章

木村竜也 
きむら たつや
関西大学非常勤講師
関西大学大学院社会学研究科社会心理学専攻博士課程後期課程単位取得退学
担当:第8章

土田こゆき 
つちだ こゆき
新阿武山病院・臨床心理士
関西大学大学院社会学研究科社会心理学専攻博士課程後期課程単位取得退学
担当:第9章

中島弘徳 
なかじま ひろのり
岡山理科大学理学部基礎理学科講師
岡山大学大学院修士課程修了
担当:第10章

與久田 巌 
よくだ いわお
関西大学非常勤講師、相愛大学非常勤講師
関西大学大学院社会学研究科社会心理学専攻博士課程後期課程単位取得退学
担当:第11章

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