ジュリア・C・ベリマン/デイヴィッド・ハーグリーヴス/ケビン・ハウエルズ/エリザベス・M・オックルフォード著/今田 寛訳 身近な問題から心理学のテーマへ。いきいきと分かりやすく心理学を紹介する。 A5判・326ページ 定価[本体2400円+税] ISBN 4-931199-97-6 C3011 \2400E 2002. 11. 30 第1版 第1刷 |
目 次
訳者序 iii
まえがきと感謝の言葉: 第2版に寄せて v
序章:自分を知ることから始める 3
心理学とは何か 4
心理学と常識 7
心理学者のアプローチ 11
1.ボディ・ランゲージ 19
ボディ・ランゲージは生まれつきそなわったものでしょうか? 20
顔 22
目 27
髪 33
身振りと姿勢 34
ボディ・ランゲージの一部としてのにおい 38
触れること 41
嘘をつくこと 44
ボディ・ランゲージに関する知識の応用 46
2.あなたのパーソナリティ 53
あなたのパーソナリティ 53
誰にもパーソナリティがある 54
あなたの見方次第 54
特性によるアプローチ 55
アイゼンクの理論:3つの重要な基本次元 56
記述から説明へ 58
キャッテルの16次元 61
ビッグ・ファイブ 61
「私は私なのか、それとも状況なのか?」:一貫性の問題 62
人と状況:相互作用 65
危険を予測する:理論の実際への適用 66
認知的見解:すべてはあなたがそれをどう見るかが問題 68
パーソナル・コンストラクト理論 68
帰属:「なぜ」という質問に答える 72
帰属と心理的な苦しみ 73
3.あなたの性:男性であること、女性であること 81
生物的性かジェンダーか? 83
生物的影響 86
ホルモンと行動 87
生物的性とジェンダー同一性 89
同性愛 95
誕生してから成熟するまで 97
女性は弱いか? 100
性差なのか性差別なのか? 104
4.あなたと他者 111
社会的役割 112
私たちのなすことと考えること 113
面目を保つこと 115
ステレオタイプ 117
ステレオタイプと偏見 120
他者は私たちにどのように影響するか? 123
同調 126
応諾と服従 128
権威の力 129
マスメディアの影響 131
社会的影響の力 134
5.あなたの情動 141
愛と愛着 143
乳児の愛の性質 146
成人の愛 148
成人の愛の性質 150
怒りと攻撃 154
熱い攻撃と冷たい攻撃 155
怒りの性質 157
人を怒らせるものとは? 158
怒りの特徴 159
6.成長する 169
発達を研究する 171
乳児の世界 172
「心の理論」:他者の情動を感じとる 176
言語の発達 178
家庭から学校へ 181
学童たちの論理的思考 182
学校での協同学習 184
青年期以降 187
7.心理的な問題 195
不安障害 196
恐怖と不安の複雑な性質 198
恐怖症の源と不安 198
恐怖と不安の治療 202
幼児期の性的虐待 205
心理学と精神分裂病 208
8.世界の見方:知覚と記憶 215
知覚 216
視覚システム 216
注意 221
記憶 224
記憶の情報処理モデル 225
覚えることと忘れることについての興味深い事実 228
9.思考と学習 235
結合による学習 235
結果による学習 238
予測することの学習 241
周囲の人からの学習 245
考えることと思考の性質 246
考えることにおける個人差 249
10.あなたと心理測定 253
初期の展開 254
今日の心理テスト 255
テストの使用法 256
テストが誤用される可能性 257
さまざまな心理テスト 259
能力テストと学力テスト 261
パーソナリティ、興味、態度のテスト 261
知能を測定する 263
信頼性と妥当性 267
創造性を測定する 268
11.あなたと動物たち 275
言語は人間に独自のものか? 277
ヒト以外の動物は考えることができるか? 280
知 能 282
道具の使用と文化 284
感覚の感受性 285
自己認識と意識 287
ヒトはヒト以外の動物よりも「すぐれている」? 289
人間による他の動物の使用 290
動物はあなたのためになるか? 292
ヒト:独特な動物 295
12.あなたと心理学研究法 301
実験的方法、相関的方法、観察的方法 303
調査とテスト 306
心理学における個人 308
心理学における質的研究 309
心理学者は何をするのか 311
訳者紹介 317
まえがきと感謝の言葉:第2版に寄せて
本書『あなたと心理学』は、なによりも読者のみなさんのことを考えて書かれました。この本の目的は、生き生きとした理解しやすい方法で、題材となる問題を日常の経験と照らし合わせながら、心理学を紹介することです。本書をつくろうというアイディアは、イギリスのレスター大学にある成人教育科で心理学を教えてきた私の経験から生まれました。私は特定の教科内容の説明というよりも、むしろ日常的な関心を考慮に入れながら、読者の観点からの諸テーマを理解へと導けるような心理学の入門書、幅広い基礎的な入門書の必要性を感じるようになりました。歴史や地理、数学、自然科学などの分野の教養は広く人々にゆきわたっていますが、私たちみんなに直接関係する分野である心理学が、中学校や高校の履修課程の一部に組み込まれることはまれです。さらに最新の方法で、しかも大人に興味をもってもらえるような切り口で書かれた心理学を紹介する本を見つけることは驚くほどむずかしいことです。私たちは教えるという体験を通して、誰もが強い関心を示し、日常生活に関連があるとわかった諸テーマをすべて取り上げて、本書にまとめました。読者にとってこの本が心理学について終生の興味をもつきっかけとなるとを願ってやみません。また心理学を教えるすべての人に、この本が学ぼうとする人ための「親しみやすく、利用しやすい」入門書であることに気づいてもらえ、また各章で取り上げた練習問題が一つひとつのテーマに親しむことに役立つと気づいてもらえれば幸いです。心理学者たちは人間の行動や思考や感情を説明しようという試みのなかで、すべての答えを見いだしてきたわけではありませんが、読者の方々は私たちがここにとりあげたテーマが、自分自身やほかの人たちに対する理解力を高めてくれるということに気づかれるでしょう。
私たちはこの第2版で、新しいテーマと最新の参考文献を加えるよう努力し、本文に新たな展開と視野をあたえるように改訂しました。各章は、第1版が出版されて以来、各題材に関連する領域が変化する状況にしたがって、最新のものに改めました。またさらに多くの新しい練習問題が含まれています。
次にあげる方々には、この本の準備にあたって、きわめて重要な役割を果たしていただきました。まず最初に、質問をしたり意見を述べてもらった学生諸君たちこそが、本書を生みだすための最初の示唆をあたえてくれました。2番目に、私たちが研究して本を書いている間、さまざまな方法で私たちを支えるという、重要な役割を果たしてくれた私たちの家族、特にフィリップ・ドリュー、ルビーとエリック・ベリーマンが、本文の草案について多くの貴重な意見を述べてくれたことに感謝します。リンダ・ハーグレーヴスには、一つの章に関する情報を提供し、貴重な助力をいただいたことに対して感謝します。マルゲリートには、「……太陽がそばで輝いているあいだ、その光はあふれ美しかった……」。コリン・オクルフォードには彼の忍耐強さと、カースティ・オクルフォードには8、9章の図表作りの労に対して、感謝します。3番目に、本文の作成に助力くださった人々、なかでもワープロ編集に多大な努力をかたむけ有能であったレベカ・チュチクに、そして追加のワープロ編集をしてもらったジュリー・エヴァンスに感謝します。ここにあげたすべての人々に対して、私たちの心からの謝意を表わします。
訳者序
本書『心理学とあなた』の第2版は、イギリスで社会人教育に経験豊かな心理学者たちが、その経験を背景にして書いた心理学入門書であり、これまでの心理学入門書とはかなり趣を異にしている。筆者たちは何よりも一般の人たちが心理学にとっつきやすいように、身近な親しみのある問題からとりあげている。私たちは一人ひとり男であり、女であり、それぞれの性格をもち、表情や動作や言葉を使って他者と交わり、一喜一憂し、ときには心理的な問題で深く悩み、子どもから大人へと成長し老年を迎える。このような生身の人間の社会の中での生きざまが、第7章までの前半で書かれている。そして一般の心理学テキストでは通常は前半に登場する、知覚、記憶、学習、思考という、現実の現象から抽象された心理的諸機能については、第8章と第9章で取り上げられている。第10章と第12章では心の測定の問題や心理学の研究方法が紹介されており、心理学がどれほど実験や調査、およびその結果の数量的表現に心を砕いている実証科学であるかを読者に伝えようとしている。また「あなたと動物たち」という章が第11章に設けられているところなどは、いかにもイギリスらしいという感じがする。全体を通して、本書を分かりやすくし、理解を助けてくれるのは、各章の末尾にある練習問題である。私にも感心させられるような好問題が数多くある。
心理学を平易に紹介しようとする場合、読者におもねて面白おかしくしようとするあまり、心理学本来の科学的側面が軽視されることがよく起こるが、本書のスタンスは決してそうではない。実証科学としての心理学の厳密さを損ねることなく、できるだけ分かりやすく心理学を説いた教科書なのである。したがって権威ある「イギリス心理学会」から出版されているのである。最初の版が出たのは1989年であったが、今回訳出されたのは1997年の改訂版であり、初版にくらべて新しい事実がかなり追加されている。改訂にあたって著者たちは、引用文献、参考書物も随分アップデートしているが、日本の一般読者にはあまり意味がないことと、英語の文献を入れることに伴う抵抗感を除くために、原著にある引用文献と推薦図書は省略した。またそれに触れた本文中の記述も省いた。
本書が翻訳されるきっかけは、学生時代に心理学を私のもとで学んだ二瓶社の吉田社長が本書に興味を示したことにある。会社の方で下訳をするから、それを私に監修しろということで了解したのであるが、訳されたものを見るとどうしても私の好みに合わない所が多く、私がかなり全体を丹念に見ることになった。しかしゼロから私が始めたわけではないので、いまでも多少の不満足感は残る。しかし何とか皆さんに読んでもらえる水準には達したのではないかと思っている。途中で通読してコメントをくれた関西学院大学心理学教室研究員の土江伸誉君と、私の都合で当初の予定よりも出版が遅れてしまったが、その間忍耐づよく待ち、さまざまな注文に応えてくれた二瓶社の吉田三郎社長に感謝の意を表したい。
本書を通して心理学に親しみを持っていただければ幸いである。
2002年10月5日 訳者 今 田 寛
[訳者紹介]
今田 寛 いまだ ひろし Ph.D., 文学博士
1957年 関西学院大学文学部心理学科卒業
1959年 関西学院大学大学院文学研究科修士課程修了
1961−63年 米国アイオワ大学大学院に留学
1968−69年 英国ロンドン大学精神医学研究所に留学
1974年 関西学院大学文学部教授
1997−2002年 同大学学長
主な著書・訳書
「恐怖と不安」(感情心理学第3巻)誠信書房、「学習の心理学」(現代の心理学3)培風館、
W・ジェームズ「心理学」(岩波文庫、上下)岩波書店