ロバート・L・ケーゲル/リン・カーン・ケーゲル 著 氏森英亞/清水直治 監訳 A5判・462ページ 定価[本体4,800円+税] ISBN 4-931199-90-9 C3011 \4800E 2002. 10. 25 第1版 第1刷 |
本書の目的は、自閉症の人と共に実践活動をしている人や共に生活している家族の人たちにとって役に立つ考え方や実践に関する指針を提供することである。本書の中で取り上げられている介入手続きは、すべて科学的な理論と実験に基づいて妥当性が認められたものである。現在、それらの手続きは自閉症の子どもとその家族を支援するために直接的に役に立つ有効な技法となっており、また今後の研究方向を示す有効な指針をも提供している。
目 次
序
1 自閉症の教育に役立つ新しい介入 ― 個人の生き方に合った縦断的な介入の意義
―
Robert L. Koegel, Lynn Kern Koegel, William
D. Frea and Annette E. Smith
2 コミュニケーションと言語介入
Lynn Kern Koege
3 刺激の過剰選択性 ― 定義、特徴、介入
―
Jennifer Rosenblatt, Patricia Bloom, and
Robert L. Koegel
4 自発的な言語の使用
Don Hawkins
5 高機能自閉症児における社会的コミュニケーションスキル
William D. Frea
6 般化のための「個別教示」モデル ― 自己管理による自律
―
Robert L. Koegel, Lynn Kern Koegel, and Deborah
Romore Parks
7 親教育と養育ストレス
Douglas Moes
8 家族のためのソーシャルサポート
Ann Leslie Albanese, Stephanie K. San Miguel,
and Robert L. Koegel
9 発達障害のある子どもとない子どもとの友達関係
Christine M. Hurley-Geffner
10 障害のある子どものインテグレーション教育への措置
Diane Hammon Kellegrew
11 親−専門家の協働とIEPの作成・実施課程の効力
Michelle Wood
12 機能分析における親−専門家のコンサルテーションモデル
Kimberly B. Mullen and William D. Frea
PREFERENCES
事項索引
人名索引
監訳者あとがき
訳者一覧
監訳者紹介
日本語版への序
ここで、私たちの著書“Teaching Children
with Autism " の日本語版序文を書くことはうれしいことである。数十年まえに比べて、今日では自閉症児の治療法は著しく改善され、またたいへん人道的になった。そのような時代に生きていることに私たちは幸せさを感じている。現存する文献によれば、コミュニケーションと行動は相互に関連し直接的に結び合わさっていることが指摘されている。その指摘については、なお研究が積み重ねられて新たな事柄が明らかにされなければならないが、それによって問題行動と機能的コミュニケーションに関する領域が非常に分かりやすくなる。主軸となる行動として、コミュニケーションに焦点を当てることによって、子どもの生活に広範かつ急速な改善がもたらされる。加えて、今日では多様性ということに社会が寛容になっている。そのため、自閉症の子どもたちは地域社会の活動に参加し、健常の仲間たちと相互交渉する機会を過去においてよりもはるかに多く経験している。今日では、多くの自閉症児に著しい治療効果が認められている。なかには、症状の多くあるいはすべてが消失する子どももいる。しかし、得られる改善の程度ないし度合いは子どもによって全く様々である。したがって、今後さらに研究を深める必要がある。最も良い改善を示した子どもの特徴について説明すると同時に、そのような改善をもたらした治療プログラムの特徴についても説明することが重要である。今のところでは、自然なセッティング(子どもの日常生活)環境で系統的な指導手続きを用いるときに、子どもに最大の改善がもたらされるようだ。そのような介入を通して、神経系における可塑性というようなメカニズムが働き始め、子どもの脳の中に別の新しい神経経路が形成され、それに伴って子どもの障害の多くが機能的に除去されるのかもしれない。
本書の目的は、自閉症の人と共に実践活動をしている人や共に生活している家族の人たちにとって役に立つ考え方や実践に関する指針を提供することである。本書の中で取り上げられている介入手続きは、すべて科学的な理論と実験に基づいて妥当性が認められたものである。現在、それらの手続きは自閉症の子どもとその家族を支援するために直接的に役に立つ有効な技法となっており、また今後の研究方向を示す有効な指針をも提供している。
本書で取り上げている介入法についてはその範囲を、非常に教育的であり、また家族を支援できるものに限定した。介入に対する私たちの一般的なアプローチは、自閉症児とその家族の生活に意義のある変化がもたらされる治療法を発展させることであり続けてきた。しかし、その目標を最も良く満たすためには、自閉症の子どもの生活に関わっているすべての人たちが対等の立場で協力しあいながら努力することが必要である。加えて、介入の過程で展開される目標は、自閉症の子どもの行動が変化するというだけではなく、社会的に意義のある結果がもたらされなければならないということである。私たちのアプローチは日常生活の中で子どもが経験する刺激や相互作用のタイプを通常化する発達モデルに基づいている。そのようなアプローチによって、多くの介入利得が得られるだけではなく、ノーマライゼーション化するという点でより多くの利得が得られるようである。
自閉症の子どもの理解と治療に関与する様々な変数をすべて解き明かすことができた個人やグループは今日までのところ存在していないことに注目すべきであろう。そのため、チームを組んでの努力、不断の評価、さらに目的を定期的に見直すことなどがこれからも絶対必要であろう。
日本語版への序を終えるにあたって、本書が読者の方々に役に立つことを願っている。そして、本書の日本語版のために尽力された氏森英亞氏および清水直治氏に感謝申し上げる。私たちの著書が日本語版の書として選択されたことを光栄に思っている。今後とも続けて日本の人たちと相互に交渉し合うことを楽しみにしている。私たちの著書に興味をもっていただいたことにたいへん感謝している。
Robert L. Koegel and Lynn Kern Koegel
監訳者紹介
氏森 英亞
1968年 東京教育大学大学院教育心理学専攻博士課程中途退学
現 在 目白大学教授 人間社会学部心理カウンセリング学科
東京学芸大学名誉教授 教育学博士
主な著書 『特別教育システムの研究と構想』(分担執筆)田研出版
『障害理解への招待』(分担執筆)日本文化科学社
『自閉症児の臨床と教育』(編著者)田研出版 他
清水 直治
1979年 東京大学大学院教育心理学専攻博士課程単位取得退学
現 在 東洋大学教授 文学部教育学科
主な著書 『行動分析学からの発達アプローチ』(共監訳)二瓶社
『自閉症児の臨床と教育』(分担執筆)田研出版
『発達障害指導事典(第2版)』(編著)学習研究社 他