北海道浅井学園大学生涯学習叢書 1

生涯学習社会の課題探求

  
浅井幹夫・藤原 等 監修
北海道女子大学生涯学習研究所 編著
A5判・280ページ 定価3,150円[本体3,000円+税]
ISBN 4-931199-64-X C3037 \3000E
1999. 1. 31  第1版 第1刷

目 次

序 北海道女子大学生涯学習研究所
第1章 生涯学習支援者養成の研究
 第1節 高等教育機関での生涯学習支援者養成 浅井幹夫 3

第2章 食と住空間
 第2節 高齢者の食生活 土屋律子 27
 第3節 インテリアと生涯学習 千里政文 37
 第4節 博物館展示計画の配慮 水野信太郎 45

第3章 心と生きがい、生涯発達
 第5節 生涯学習社会における「生きがい」の創造 谷川幸雄 55
 第6節 暮らしと信仰 阿部 包 63
 第7節 精神遅滞児の生涯発達 藤原 等 71
 
第4章 レクレーションとスポーツ
 第8節 レクレーション・ビズと生涯学習 粥川道子 83
 第9節 野草観察とレクレーション 前山和彰 91
 第10節 スポーツイベントの運営法 北村優明 99
 第11節 スポーツ活動の心理:能動性とモチベーション 竹田唯史 107
 第12節 ジェンダーから見た生涯スポーツの社会学 佐藤 馨 115
 第13節 中高年のダンス活動 増山尚美 123

第5章 芸術活動
 第14節 彫刻と生涯学習 永野光一 135
 第15節 陶芸と生涯学習 対馬賢二 143
 第16節 北広島少年少女合唱団の歩み 岡本眞理子 153
 第17節 生涯学習における音楽教育の意義 山口祐子 161
 第18節 生涯音楽から見た市民の音楽活動 鈴木しおり 169

第6章 学校教育と社会教育
 第19節 生涯学習社会を目指すライフスキル教育 今野洋子 179
 第20節 生涯学習社会における学校教育の役割 山谷敬三郎 187
 第21節 社会教育における学習機会の提供 村井俊博 197

第7章 情報の活用
 第22節 情報処理教育の必要性 小杉直美 207
 第23節 マルチメディアの現状と将来 大関 慎 217
 第24節 生涯学習社会でのインターネットの活用 山本正八 225
 
第8章 企業、労働と継続的自己啓発
 第25節 地域産業における企業の存立構造:その地域間比較 沓沢 隆 235
 第26節 現代社会とリカレント学習 佐々木邦子 243
 第27節 企業における教育・育成システムの課題 三沢光男 353

監修者紹介 263
執筆者一覧 264

カバー装画・阿部典英
扉絵・野崎嘉男




 最近よく聞くことですが、21世紀のわが国は生涯学習社会になると言われています。生涯学習とは、次のようなことを言っているのだと理解しています。人々は、自己の充実や生活の質の向上などを目指していて、様々な学習の機会を求めていると言われています。これらの学習は、それぞれが自発的意思に基づき、学習内容や学習方法を適宜選択しながら、生涯を通じて行なうことから「生涯学習」と呼ばれるようになりました。わが国では教育は、これまで学校教育に対して社会教育という概念で考えられてきたのですが、家庭教育、学校教育、社会教育、企業内教育等、あらゆる教育を包含する上位概念として、この生涯教育(学習者主体の考えから生涯学習)という概念が提唱され、今日、一般的に使用されるようになってきたようです。
 それでは、本当に21世紀のわが国は生涯学習社会になるのでしょうか。北海道でもそうなるのでしょうか。そのことを予測させるような調査結果がありますので、その一部を紹介します。
 北海道は平成8年度に、20歳以上の男女2,600人を対象にして「道民の生涯学習意識調査」を実施しました。その結果、生涯学習という言葉を知っているかという設問では、「知っている」が83.3%、「知らない」が16.4%、「無回答」が0.3%で、関心・意欲についての設問では、「学習したい」が77.1%、「学習したくない」が7.3%、「無回答」が15.6%でした。この一年間に生涯学習を実施したかという設問では、「学習した」が51.3%、「学習していない」が42.0%、「無回答」が6.7%で、学習できなかった理由の設問では(複数回答による上位3位まで)、「忙しい」が62.0%、「きっかけがない」が27.5%、「情報不足」が25.9%となっています。生涯学習の方法についての設問では(複数回答のよる上位3位まで)、「公民館等」が46.3%、「地域のサークル」が44.3%、「本やテレビ」が35.5%で、大学や高等教育機関への社会人入学希望の有無を聞いた設問では、「入学したい」が50.5%、「入学したいとは思わない」が32.3%、「無回答」が17.2%でした。学歴偏重社会からの移行に関する設問では、「移行するべきと思う」が82.4%、「移行するべきと思わない」が6.7%、「無回答」が10.9%で、「生涯学習」の成果をどのように活用したいかの設問では(複数回答による上位3位まで)、「人生を豊かに」が58.2%、「健康の維持」が52.5%、「仕事等への活用」が32.6%となっています。
 次に北海道では、平成9年度に道内事業所従業員男女2,600人を対象にして、「職業人の生涯学習に関する意識調査」を実施しました。その結果、希望する学習内容の設問では(複数回答のよる上位3位まで)、「健康・スポーツ」が83.4%、「パソコン」が43.1%、「資格取得」が37.6%で、大学・短大・専門学校への再入学・公開講座の受講希望の設問では、「ぜひ受けたい」が11.2%、「できれば受けたい」が50.7%、「受けたいと思わない」が24.0%、「無回答」が14.1%でした。
 それでは企業は従業員の生涯学習をどのように考えているのでしょうか。北海道では、平成9年度に道内企業1,300社対象の「企業の生涯学習に関する意識調査」を実施しました。その結果、従業員の個人的学習活動に対する会社の考えを問うた設問では、「業務関係は支援したい」が57.9%、「業務以外も支援したい」が26.0%、「望ましいことだと考えている」が8.0%,「無回答」が8.1%で、大学等や公的機関に希望することの設問では(複数回答による上位3位まで)、「学習機会等の情報提供の充実」が33.0%、「研修、学習の場への援助」が30.6%、「土・日や夜間の講座・教室の充実」が29.2%でした。
 上の調査結果から、なるほど北海道においても21世紀は生涯学習社会になるようにも思われ希望が湧いてきます。それでは高等教育機関として、どのように生涯学習に関わっていけば良いのか、その内容や方法はどうあるべきなのか、また当研究所が果たすべき研究とはどのようなものなのかなど問題は山積しています。研究領域や研究分野も定めなければなりません。日本生涯教育学会によれば、生涯教育・生涯学習には、5つの研究領域と36の研究分野があるといいます。それは次のようになっています。
 1.生涯学習研究
  @生涯学習理論、A生涯学習研究方法論、B生涯学習史、C生涯学習内容・方法論、D生涯発達論
 2.生涯学習支援研究
  @生涯学習振興・推進論、A生涯学習支援システム論、B生涯学習行財政論、C学習情報論、D学習相談論、E生涯学習関連施設論、F学習機会提供論、G生涯学習人材論、H生涯学習評価論、I学習成果活用論、Jその他の生涯学習支援研究
 3.生涯教育研究
  @生涯教育理論、A生涯教育領域論、B家庭教育論、C学校教育論、D社会教育論、E生涯スポーツ・社会体育論、F企業教育論、G遠隔教育論・放送教育論・通信教育論、H生涯各期の教育・学習論、I乳幼児教育・学習論、J青少年教育・学習論、K成人教育・学習論、L高齢者教育・学習論、M女性の生涯教育・学習論、N各国の生涯教育
 4.総合・複合研究
  @総合・複合研究、A生涯学習社会論、Bマスコミ文化論、C現代的課題研究
 5.実践事例研究
  @実践事例研究
 さて、上記のような生涯教育・生涯学習の現況の中で学校法人浅井学園北海道女子大学は、1997年12月22日、生涯学習研究所を発足させました。所員は学園傘下の北海道ドレスメーカー学院、北海道女子大学短期大学部、北海道女子大学に所属する教育職員33名、研究員は学園外から16名、合計49名で組織されています。所員、研究員の多彩な持ち味を生かして、事業計画の一つとして、この度、生涯学習叢書を刊行することになり、本書はその第1号ということになりました。来るべき生涯学習社会での課題はどのようなものなのか、27名の所員、研究員それぞれの専門的立場から「課題探究」と銘打って著してみました。それぞれの専門性と生涯学習との接点が上手く著されているかどうか、果たして課題探究になっているかどうか等々、心配な面が多々ありますが、読者、諸賢のご指導とご鞭撻を宜しくお願い致します。
 最後になりましたが、北海道女子大学渡邉進学長ほか学園の多くの関係者並びに二瓶社の吉田三郎氏、同社の駒木雅子氏に大変お世話になり本書が成ったということを記し、心からの謝意を表します。
  1998年10月 紅葉が舞う野幌原生林、文京台にて
 北海道浅井学園大学生涯学習研究所

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