カレン・プライア 著 杉山尚子/鉾立久美子 訳 犬のクリッカートレーニングは、劇的な効果で有効性が認められています。猫の場合、「調教する」ことが矛盾する感覚をもたらすことから、トレーニングに違和感をもたれることが多いようです。しかし、クリッカーで猫との新しい世界がひらけます。 A5判・128ページ 定価1,260円(本体1,200円+税) ISBN 4-86108-036-3 C1011 \1200E 2006. 11. 24 第1版 第1刷 |
目 次
第1章 クリッカートレーニングをはじめましょう 9
なぜ猫をトレーニングするのか? 8
猫の日常生活と態度を改善する 11
クリッカートレーニングとは何か? 13
始める前に 15
始めましょう:はじめてのクリッカートレーニング 17
猫は反応が鈍いのか? 19
はじめてのシェイピング 20
トレーニングをどのくらい続けるか 22
トレーニングを終わらせる 23
さらなるターゲットトレーニング 24
何かかわいらしい行動を教える 27
クリッカーなしのクリッキング 28
クリッカーを恐れる:一時的な問題 29
ごほうびをもっと好ましいものにする 30
食べ物のごほうびにかわるもの 33
クリッカー日誌のはじまり 35
どのくらいの早さでできるようになりますか? 35
第2章 役に立つ行動 37
呼んだら来る 38
合図を教える 40
じっと座っていてちょうだい:おねだりにかわるもの 44
じっと座っている時間をだんだん長くしていくこと 46
リードをつないで散歩をさせること 49
抱き上げる合図 52
爪を立てない 53
手入れをしてきれいにすること 55
多くの猫をトレーニングすること 58
第3章 楽しいお遊び 61
クリッカートレーニングされた猫 62
猫のアジリティ競技 63
音楽を楽しむ猫 66
点をたどる:究極の猫のスポーツ 67
行動に名前をつける:合図の加え方 69
同時にたくさんの行動を教える 72
スピードの速い動き 75
クリッカートレーニングとコミュニケーション 78
学ぶことを学ぶ:クリッカートレーニングの利点 79
レパートリーが増えれば関係はさらに豊かになる 81
飼い猫だけではない 84
第4章 問題と解決法 79
排泄の問題 80
トイレが汚れすぎて使えない 89
トイレが使いにくい 89
同じトイレをたくさんの猫が使う 90
人間に対する“攻撃” 91
足首をかむ 92
ヒョウのようなジャンプ:上からの待ち伏せ 93
家具を引っかいたり引き裂いたりすること 95
退屈 98
鳴き声 100
食事中にテーブルに跳び乗る 100
食べ物の好みがうるさい 101
抜け毛 103
木登り 104
猫どおしのケンカ 106
猫と犬を一緒に飼う 107
猫を追いかけ回す犬に対処する:あるクリッカーストーリー 109
コミュニケーションとしてのクリッカートレーニング 115
第5章 資料:お役立ち情報とさらに勉強するには 117
クリッカートレーニングのための書籍、ビデオ、道具 118
猫のクリッカートレーニングのウェッブサイトとリスト 120
日本語で学ぶクリッカートレーニング 121
付 録 123
猫のクリッカートレーニング15の秘訣 124
あとがき 127
訳者あとがき
本書の原著であるClicker Training for Catsに出合ったのは、2003年5月、サンフランシスコで開催された国際行動分析学会の会場の一角に設置されたブックストアであった。迷わず手に取った。著者カレン・プライアのベストセラー、Don’t Shoot the Dogの邦訳書(邦題『うまくやるための強化の原理』)を1998年に二瓶社から上梓していたことで、クリッカートレーニングにはなじみがあったが、猫を相手にすることに興味をそそられたからである。
日本に持ち帰り、後に共訳者となった愛猫家の鉾立さんにお土産として手渡した時点では、翻訳を考えていた訳ではない。ある日、天啓のようにこれを2人で訳出してみることを思いついたときにも、実現の可能性を確信していたわけではない。しかし、それからまもなくの6月15日の夜のことだった。鉾立さんから届いた1通の電子メールには、本書の冒頭部分の日本語訳が記されていたのである。原文の味が活きているその日本語と、愛猫家ならではの表現に接し、私は翻訳の可能性を確信した。
それからは、第1章と第2章を鉾立が、第3章以降を杉山が担当したが、最終的な編集作業は杉山が行った。原著は一般の読者にも読みやすいように平易な英語で書かれているため、日本人にはなじみの少ない熟語や口語表現が多用されている。訳出にあたってはこの点に悩まされたが、実に心に残る作業であった。
原著は表紙にはユーモラスな猫の姿が描かれているものの、内容は文字ばかりで構成されている。しかし、邦訳にあたり、より魅力的な本づくりをするために、カレンは写真を入れることを提案しただけではなく、実際に多くのトレーニング場面の写真を送ってくれた。二瓶社はこれを受け、カレンからのプレゼントであるすばらしい写真を本書に散りばめた。そのおかげで、いっそうの光彩を放って本書を皆様のお手元にお届けできることは望外の喜びだ。ただし、2枚だけは私自身が撮影した写真をしのばせている。本文とともにお楽しみいただければ幸いである
本書を上梓するにあたり、猫に関する専門的な記述に関しては、桜井動物病院の桜井富士朗博士、帝京科学大学で応用動物行動学を専門とする加隈良枝博士にご指導いただいた。また、英語の表現に関しては、南フロリダ大学の清水透教授にお世話になった。ノーステキサス大学大学院で、本書にも登場するヘスース・ロザレス-ルイス教授に直接指導を受けた若き行動分析家の是村由佳さんには多くの示唆をいただいた。記して感謝する。
最後に、この小さな本を心をこめて鉾立の両親に捧げます。そして、ソラ、アトム、ブリジッタ、ベッティ、君たちがいなければ本書は生まれなかった。ありがとう。君たちの瞳を忘れない。
2006年10月 深まりゆく秋の日に
杉山 尚子
原著者紹介
カレン・プライア
1960年代にイルカのトレーニングを通して、従来の罰に頼らない新しい動物トレーニングの技法を開発。行動分析学(オペラント条件づけ)の原理を基礎とした、クリッカートレーニングの創始者である。トレーニングの原理を一般向けに著した、主著Don’t Shoot the Dog(邦題『うまくやるための強化の原理』、二瓶社)は世界的なベストセラーとなっている。
訳者紹介
杉山尚子
慶應義塾大学大学院心理学専攻博士課程修了。山脇学園短期大学助教授。日本行動分析学会常任理事。日本動物看護学会評議員。主著『行動分析学入門─ヒトの行動の思いがけない理由』(集英社新書、2005年)
鉾立久美子
活水女子短期大学英文科卒。介護支援専門員。