心理学実験ノート 第5版

  
心理学実験ノート編纂委員会 編

 実証科学としての心理学を身につけるためにはこの実験実習は必須の科目である。最も基本的な実験項目、人間の行動に関する実験(基礎編)12課題、同じく(発展編)5課題、動物実験4課題の21課題をあげて、基礎的な実験を経験し、レポートを仕上げるまで指導できるようにしてある。

B5判・144ページ 定価1,890[本体1,800円+税]
ISBN 4-86108-033-9 C3011 \1800E
2006. 5. 15  第1版 第1刷

目 次

1.実験を始める前に
 1‐1.心理学における実験的研究 
 1‐2.心理統計法 
 1‐3.レポートの書き方 

2.人間の行動に関する実験(基礎編)
 2‐1.ミュラー・リヤーの錯視 
 2‐2.重量弁別 
 2‐3.触2点閾 
 2‐4.係留効果 
 2‐5.ストループ効果 
 2‐6.反応時間 
 2‐7.心的回転 
 2‐8.鏡映描写:知覚運動学習 
 2‐9.鏡映描写:学習の転移 
 2‐10.短期記憶 
 2‐11.系列学習 
 2‐12.カテゴリーの認知 

3.人間の行動に関する実験(発展編)
 3‐1.驚愕反応の馴化 
 3‐2.皮膚電気活動(EDA)とうそ発見 
 3‐3.情動変化と指尖容積脈波 
 3‐4.バイオフィードバック 
 3‐5.自律訓練法 

4.動物の行動に関する実験
 4‐1.マウスのオープンティールド内活動 
 4‐2.マウスの受動的回避学習 
 4‐3.マウスの水迷路学習 
 4‐4.ラットのオペラント条件づけ 

付録 
参考文献 
改訂にあたって 
編纂委員紹介 




あとがき(改訂にあたって)

学生諸君へ
 心理学を学ぶ魅力のひとつは実験実習を経験できることである。実験実習は、教室に座り、先生の講義をただ一方的に聞くだけの授業ではない。実習テーマについて自分で下調べをし、実験計画を練り、白衣を着てグループワークを行う。そうすると、専門の研究者になったみたいで少し偉くなった気がする。不思議と実習内容に興味も湧いてくる。実際に実験を体験して初めて気がつくことがある。ちょっとしたことが意外と難しい。被験者への接し方、実験装置の取り扱い、データの記録、工夫を要する事柄がたくさんある。実験が終われば、パソコンを使ってデータを分析し、レポートをまとめる。こうした過程で教科書に書いてある内容を「なるほど」と納得できる。ひょっとしたら、新たな発見があるかもしれないし、面白いアイデアが浮かぶかもしれない。知識が本当の意味で身につく。また、グループワークを通じて友達がたくさんできるだろう。実験実習を通じて多くの楽しい経験をしてほしい。

指導される先生方へ
 今、あなたの前にいる学生たちは、テレビやパソコンを使って世界中から情報を集め、膨大な種類の映像や音楽をいつでも手軽に楽しめる毎日を生きている。子どものころからこのようなエキサイティングな経験をしてきた学生たちをどのように指導すべきかは、難しい問題である。教室での一方的な講義形式の授業は、もはや時代遅れではないかと私は思う。学生たちは受身の授業だけでは満足しない。だから、勉学になかなか熱心になれず、教室では私語や居眠りが蔓延する。たとえ成績や単位で脅かしても、多くの学生は、間に合わせで勉強するのが関の山で、興味のない事柄は試験が終わればすっかり忘れてしまう。
 学習心理学では、「学習」とは、「経験を通じて行動が変化すること」と定義されている。大学教育においてしばしば欠けているのは、学生が学ぶべき何かを直接「経験」する機会かもしれない。昨今、チュートリアルや少人数教育の有効性が指摘されているが、演習や実習中心の直接経験を重視した教育が、これからはますます必要となるだろう。
 実験実習では、学生に実験者としての心構えを促したい。そしてグループワークを通じて役割分担の大切さを学ばせたい。まずは実習に主体的に参加する態度を養おう。それから教科書に書いてある様々な事柄を実際に体験させよう。本書は、学生が自分の体験を記録するという意味で「ノート」とした。指導に当たられる先生は、学生の良き先導役であり相談役であってほしい。
 さて、この『心理学実験ノート』も第5版である。最近の大学教育の現場では、学生1人に1台ずつパソコンを割り当てられる環境が整ってきたので、パソコンを利用して行える実験課題をいくつか考案し、それらを中心に編集した。本書で紹介した大部分のソフトは市販されており(http://www.bems.co.jp)、また磯までご連絡いただけると紹介させていただく(iso@hyo-med.ac.jp)。

   心理学実験ノート編纂委員会代表 磯 博行




心理学実験ノート編纂委員紹介

磯 博行 いそ ひろゆき 
 兵庫医科大学助教授。専門は学習心理学・行動神経科学。基礎から応用まで、心理学・行動科学コンサルタントを目指しています。
大森慈子 おおもり やすこ
 仁愛大学専任講師。専門は生理・社会心理学。対人場面における、まばたきや視線行動について研究中。
荘厳依子 そうごん よりこ
 関西学院大学研究員。専門は発達心理学。親子関係に関心があり、親の行動が子どもの行動にどのように影響するか研究中。
土江伸誉 どえ のぶたか 関西学院大学研究員。専門は学習心理学。主に動物を用いて適応的な学習のメカニズムについて研究中。
中道希容 なかみち きよ
 専門は学習・思考・判断・認知心理学。特に人間の判断メカニズムについて研究中。地域社会への貢献についても興味があり、実践中。
藤本 清 ふじもと きよし
 関西学院大学博士研究員。専門は知覚心理学。見る・聞くのメカニズムを研究中。

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