P.A.アルバート/A.C.トルートマン 著 佐久間 徹/谷 晋二/大野裕史 訳 待たれていた第2版がよううやく刊行になりました。応用行動分析の概念を理解するだけでなく、その原理を使ってオリジナルのレシピを作れるようになることが本書の目的です。倫理に関するページ、データ集めとグラフ化、機能分析に関する章が補強されています。 B5判・416ページ 定価3,360[本体3,200円+税] ISBN 4-86108-015-0 C3011 \3200E 2004. 5. 10 日本語版第2版 第1刷 |
目 次
第1章 応用行動分析の基本的な考え方 1
説明の有用性とは? 2
生理学的説明 2
発達的説明 6
認知的説明 11
行動的説明 15
行動主義の歴史 20
要 約 26
討議のテーマ 26
第2章 応用行動分析を適応するに当たっての責務 27
応用行動分析に対する高い関心 27
応用行動分析の適用倫理 31
説明責任 38
理論と実践 43
要 約 43
議論のテーマ 43
第3章 行動目標の作成 45
行動目標の定義と目的 46
教育目標 48
行動目標の書式 55
行動目標の範囲 59
行動目標と個別教育プログラム(IEP) 64
要 約 66
議論のテーマ 67
第4章 データの収集とグラフ化 69
データ収集法の論理 69
方法の選択 71
逸話的レポート 74
行動的産物記録法 78
観察記録法 80
持続時間記録法および潜時記録法 99
信頼性 102
議論のテーマ 105
要 約 105
第5章 データのグラフ化 107
単純な折れ線グラフ 107
要 約 120
討論のテーマ 121
第6章 一事例の実験デザイン 127
変数と関数関係 127
実験デザインの基本カテゴリー 128
ABデザイン 133
反転デザイン 136
基準変更デザイン 141
マルチ・ベースライン・デザイン 146
操作交代デザイン 155
チェインジング・コンディション・デザイン 162
一事例の実験デザインの評価 167
要 約 171
討論のテーマ 171
第7章 行動の生起頻度を増大させる随伴操作 175
正の強化 177
効果的な強化子の選択 177
負の強化 208
自然な強化 212
要 約 213
討論のテーマ 213
第8章 不適切な行動を減少させる結果操作 215
問題行動を減少させる方法 216
レベルT:分化強化の応用 217
レベルU:消去 224
罰 229
レベルV:好ましい刺激の除去 230
レベルW:嫌悪刺激の呈示 237
要 約 247
議論のテーマ 247
第9章 分化強化:刺激制御とシェイピング 249
刺激制御を形成するための分化強化 250
複雑な行動を教える 265
シェイピングのための分化強化 271
要 約 275
議論のテーマ 275
第10章 機能査定と機能分析 277
他の方略の必要性 277
第1段階:機能査定 283
第2ステージ:機能分析手続き 292
要 約 300
議論のテーマ 300
第11章 行動変容を般化させるために 301
般 化 302
要 約 323
議論のポイント 323
第12章 行動自己管理の指導 325
当たり前の経験 326
行動管理の指導準備 327
重度の障害のある人の自己管理 338
中度の障害のある人の自己管理 339
要 約 339
論議のポイント 339
第13章 教室での実践 341
刺激制御 341
教室での実践 346
要 約 360
論議ポイント 360
付録:専門的諸団体による嫌悪的な行動介入を避けるための決議 361
アメリカ精神遅滞市民の会による行動支援に関する意見声明(1995年10月) 361
例外児のための評議会による身体的介入に関する方針(1993年4月) 362
アメリカ精神遅滞学会による嫌悪手続きに関する方針(1990年1月20日) 363
重度障害を持つ人々の連盟による不要な介入の中止についての決議(1986年11月5日) 364
全米学校心理士連盟による体罰についての決議(1986年4月19日) 364
参考文献 366
索 引 394
用語索引 398
訳者あとがき 407
日本語第2版訳者あとがき 409
訳者紹介 410
はじめに
応用行動分析を学生に教えるために、専門的で、系統的な、読みやすいテキストブックが必要だったというのがApplied
Behavior Analysis for Teachersの第1版を書こうと考えた動機でした。学生たちに応用行動分析の概念を理解してもらうだけでなく、教室や他の場面でその概念を応用する方法を知ってもらいたいと思っています。応用行動分析は成果を上げることができます。学業的なスキルや適応的なスキル、適切な社会的行動を教えるためにこの原理を使うことができます。応用行動分析は生徒を先生の統制下におくための計略の寄せ集めではなく、ひとつの統合的なマネジメントシステムです。
この本は教育者が出合ういろいろな問題の解決策を単にひとつずつ提供しているハウツーものの本ではありません。すべての出来事にハウツーを示すことは不可能です。子どもや大人の人と一緒に勉強したり働いたりすることを大変楽しいものにしていくことは、すべての人が一人ひとり違っていて、ひとつの手続きですべての人に効果的のある方法はないという認識から始まります。問題をうまく解決するために、自分自身のオリジナルなレシピを応用行動分析の原理を使って作れるようになって欲しいと思っています。応用行動分析の原理をうまく使いこなすためには、頭のやわらかい人の熱心で積極的な参加が必要です。現在のところ、応用行動分析はもっとも強力な指導システムですから、適切で倫理的な使い方を学んで欲しいと望んでいます。
応用行動分析を教える人は、テキストが専門的に正確に書かれているかに関心があります。この本はその期待に沿えると思います。同時に、学生が読んで楽しめるような例もたくさん盛り込んで活気のある本にしようと試みました。この本の中で紹介している具体例は、いろいろなレベルの子どもや大人の問題を扱っています。上手な先生とそうでない先生についても触れています。この本の中の例の多くは、私たちがそうであって欲しいと期待している教師や、将来学生たちにそうなって欲しいと望んでいる教師の例、つまり過ちから学ぶ良き教師の例です。
第5版を書くにあたって、同僚やこの本を読んだ学生の手紙から多くの示唆を得ました。しかし、私たちは憤った動物愛護活動家から手紙をもらうことになっても、第11章で紹介したネズミ捕りの例を十分に忘れないでおくべきものと考えています。データを集め、それをグラフ化することについての長く、専門的な章は2つ以上の章に分け、機能的分析の章を加え、応用行動分析の手続きを他者に教えることに関する章を割愛しました。
最後に、この本では指導者が彼らの学生に講義や他の本を読ませながら、行動変容の実習を割り当てられるようにしてあります。このテキストでは標的行動を明確にすることから始まって、実験デザインを選択し、結果操作、先行刺激の操作、行動変化の般化を計画するまで順々に進めています。学生に引き続く勉強でしっかりとした基礎となると思われる教授方法の基礎知識を紹介しようと試みたつもりです。
この本に関して、読者の皆様からの意見を心待ちにしています。この本を書くにあたって私たちはとても楽しく仕事をしました。読者の皆様にも同じくらい楽しみながら読み進んでいただけることを期待します。
訳者紹介
佐久間 徹 さくま とおる
関西福祉科学大学 教授
研究テーマ:発達障害児のことばの指導
著書・論文:「ダウン症の早期教育」(分担執筆、二瓶社)「一事例の実験デザイン」(分担監訳、二瓶社)「ABA(応用行動分析)のルーツ―B.F.スキナー―(仮)」(監訳、二瓶社)
大野 裕史 おおの ひろし
吉備国際大学 教授
研究テーマ:発達障害を持つ児者、および彼らに関わる人々への応用行動分析的援助
著書・論文:「行動分析学から見た子どもの発達」(分担訳、
二瓶社、 1998)「ことばの出現と形成」(単著、分担、小林重雄〔監修〕)「発達障害の理解と援助」(コレール社、1999)「心のデザイン・文化のデザイン」(単著、分担、岸野俊彦〔編〕、人間文化の展開、中部日本教育文化会、1999)「適切行動のコントロール」(単著、分担、小林重雄〔監・編〕、総説臨床心理学〔講座臨床心理学1〕、コレール社、2001)
谷 晋二 たに しんじ
大阪人間科学大学 助教授
研究テーマ:行動分析による対人援助
著書・論文:「発達障害の理解と援助」(小林重雄〔監修〕、コレール社、1999)「ことばと行動」(分担、ブレーン出版、2001)