デジタルサウンドプロセシング

  
田上博司 著
デジタル機器を使って音楽制作を絵画制作なみに楽しむための本。今までになかった音世界が拡がる。
A5判・216ページ 定価[本体2800円+税]
ISBN 4-86108-005-3 C3055 \2800E
2003. 3. 31  第1版 第1刷

目 次

 序 iii
 目次 v

1.デジタルデータによるサウンド処理 3
 1‐1.デジタルサウンド・プロセシング 3
 1‐2.音を数値で表す2つの方法 4
 1‐3.音を数値化することのメリット 7

2.デスクトップミュージック(DTM) 10
 2‐1.使用する装置の構成 10
  2‐1‐1.機器の構成 10
  2‐1‐2.パソコン 15
  2‐1‐3.オーディオカード 17
  2‐1‐4.音源装置 18
  2‐1‐5.MIDIキーボード 19
  2‐1‐6.DTMソフトウェア 19
  2‐1‐7.ステレオアンプおよびスピーカー 20
 2‐2.録音と再生 21
  2‐2‐1.「音」の正体 21
  2‐2‐2.サンプリング 22
  2‐2‐3.PCM録音 23
  2‐2‐4.モノラル録音とステレオ録音 23
  2‐2‐5.録音ソフトウェア 29
  2‐2‐6.再生ソフトウェア 29
 2‐3.MIDIによる演奏と演奏記録 30
  2‐3‐1.MIDIとは何か 30
  2‐3‐2.MIDIが伝えるもの 31
  2‐3‐3.MIDIキーボード 32
  2‐3‐4.MIDIシーケンサー 34
  2‐3‐5.GM: General MIDI規格と拡張MIDI規格(XG,GS,GM2) 35
  2‐3‐6.スタンダードMIDIファイル(SMF) 36
 2‐4.エフェクト 37
  2‐4‐1.空間エフェクト 37
 2‐4‐2.エフェクトの種類と機能 38
 2‐5.音の合成 39
 2‐6.DTMにおけるコンピュータの役割 40

3.デジタル・オーディオ・ワークステーション(DAW) 42
 3‐1.DAWとは 42
  3‐1‐1.DAWの定義 42
  3‐1‐2.DAWでできること 42
 3‐2.DAWの概要 43
  3‐2‐1.DAWソフトウェア連携図 43
  3‐2‐2.DAWの信号の流れ 45
  3‐2‐3.OSの設定 47
 3‐3.シーケンサーユニット 49
  3‐3‐1.ソフトウェアシーケンサー 49
  3‐3‐2.演奏データのステップ入力 51
  3‐3‐3.演奏データのスコア入力 52
  3‐3‐4.演奏データのリアルタイム入力=MIDI録音 53
  3‐3‐5.MIDIデータリストによる編集 54
 3‐4.録音ユニット 55
  3‐4‐1.多重録音・再生装置(マルチトラックレコーダー) 55
  3‐4‐2.操作系 56
  3‐4‐3.マルチトラック・レコーディング 57
  3‐4‐4.音声録音とMIDI録音(擬似録音) 58
 3‐5.音源ユニット 59
 3‐6.オーディオミキサーユニット 61
 3‐7.MIDIミキサーユニット 63
 3‐8.エフェクターユニット 66
  3‐8‐1.エフェクターの使い方 66
  3‐8‐2.リバーブ(残響) 68
  3‐8‐3.ディレイ(エコー) 69
  3‐8‐4.フェイザー 71
  3‐8‐5.コーラス 72
  3‐8‐6.フランジャー 73
  3‐8‐7.その他のエフェクト 74

4.音声データの保存と圧縮 77
 4‐1.音声ファイル 77
  4‐1‐1.音声ファイルとは 77
  4‐1‐2.音声ファイルの圧縮とその原理 77
 4‐2.音声ファイルの再生 80
 4‐3.ミュージックCDのファイル化(音楽の取込み) 82

5.コンピュータによる音の編集 84
 5‐1.音声データの編集ツール 84
 5‐2.音のカットアンドペースト 85
 5‐3.フェードイン・フェードアウト 87
 5‐4.再生時間の変更 89

6.楽音合成 90
 6‐1.音の要素 90
  6‐1‐1.音の属性を決定する要素 90
  6‐1‐2.波長・周波数と音程 91
  6‐1‐3.振幅と音量 91
  6‐1‐4.波形と音色 92
 6‐2.音の時系列変化 92
  6‐2‐1.音量の時系列変化 92
  6‐2‐2.音色の時系列変化 93
  6‐2‐3.エンベロープ 93
  6‐2‐4.周期的時系列変化 96

7.シンセサイザー 97
 7‐1.さまざまなシンセサイザー 97
  7‐1‐1.アナログ・シンセサイザー 97
  7‐1‐2.デジタル・シンセサイザー 98
  7‐1‐3.アナログモデリング・シンセサイザー 99
  7‐1‐4.ソフトウェア・シンセサイザー(バーチャルシンセサイザー) 100
  7‐1‐5.シンセサイザーの系統図 101
 7‐2.シンセサイザーによる音合成の原理 102
  7‐2‐1.シンセサイザーの音合成モデル 102
  7‐2‐2.音源 103
  7‐2‐3.減算合成 104
  7‐2‐4.加算合成 106
  7‐2‐5.モジュレーション合成(積算合成) 107

8.アナログモデリング・シンセサイザーによる減算合成手法 108
 8‐1.楽音合成の実際 108
 8‐2.DAWのセットアップ 108
  8‐2‐1.VSTラックのセットアップ 108
  8‐2‐2.シーケンサー出力先の設定 110
  8‐2‐3.neon操作パネルの表示 111
 8‐3.楽器音の合成 112
  8‐3‐1.減算合成の手順 112
  8‐3‐2.弦楽器系の音―ヴァイオリンのエミュレート 113
  8‐3‐3.金管楽器系の音―フレンチ・ホルンのエミュレート 118
  8‐3‐4.リード系木管楽器の音―クラリネットのエミュレート 120
  8‐3‐5.重奏による音―ストリングスのエミュレート 122
  8‐3‐6.音色の保存 125

9.MIDIを使ったシンセサイザーの演奏 127
 9‐1.Cubasisのセットアップ 127
  9‐1‐1.VSTラックのセットアップ 127
  9‐1‐2.VSTチャンネルミキサーのセットアップ 129
 9‐2.曲データの打ち込み 130
  9‐2‐1.MIDIデータの入力方法 130
  9‐2‐2.伴奏のステップ入力 130
  9‐2‐3.主旋律のリアルタイム入力 134
  9‐2‐4.イベントの追加入力 134
 9‐3.演奏と調整 135
 9‐4.ミックスダウン(プリマスタリング) 136
  9‐4‐1.ミックスダウンとは 136
  9‐4‐2.ミックスダウンの手順 137

10.ミュージックCDの作成 141
 10‐1.書き込みのできるCD 141
  10‐1‐1.CDとCD‐R 141
  10‐1‐2.CD‐RW 142
 10‐2.ミュージックCD 142
  10‐2‐1.ミュージックCDとデータCD 142
  10‐2‐2.ミュージックCDの再生 143
 10‐3.CD‐Rの焼き付け 144
  10‐3‐1.CD‐Rライティングソフト(CD‐R焼き付けソフト) 144
  10‐3‐2.CDのデュプリケート(コピー)と編集 146
  10‐3‐3.トラックアトワンスとディスクアトワンス 146
  10‐3‐4.パケットライティング(データCD) 147
 10‐4.著作権の問題 149

11.音楽製作の新しい可能性―チャンスオペレーション・コンポージング 151
 11‐1.ジョン=ケージとチャンスオペレーション 151
 11‐2.コンピュータとチャンスオペレーション 151
 11‐3.チャンスオペレーションの有調音楽への応用 153
 11‐4.自動作曲ソフト 158
 11‐5.チャンスオペレーション・コンポージングの基礎技法 160
  11‐5‐1.チャンスオペレーション・コンポージング法 160
  11‐5‐2.ソフトウェアの条件 160
  11‐5‐3.基本となる音楽的知識 162
  11‐5‐4.チャンスオペレーション・コンポージングの手順 164

 付録 GM(General MIDI system level‐1)の楽音配列 170
 索引 200 
 著者紹介 205

序 

 1982年に、それまで音楽媒体の主流であったレコード盤に代わってCDが登場して以来、音楽録音の方式もこれまでのアナログレコーディングからデジタルレコーディングへと大きく変わってきた。現在われわれが耳にする音楽は、そのほとんどが何らかの形でデジタル処理されているといっても過言ではないだろう。
 アナログからデジタルへという変化は、音に限ったことではないが、実は蒸気機関が電気エネルギーに代わるぐらいの変化である。しかし、一見、いや一聞してその変化はそう大きく感じられない。レコード盤がCDに変わって何が変わったのかといえば、聴取者にとっては若干音がよくなったのとアルバムのサイズがかなり小さくなったことぐらいであろう。
 ところが実際は、その中身も可能性もこれまでとはまったく違うものになっている。その意味は本文で次第に明らかにしていくが、音がデジタルになって最も変わったことは、その作成から演奏、記録、加工にいたるまで、すべてコンピュータというツールにより一貫して行えるようになったことであろう。また、これまで非常に熟練した技術や高いコストを要求されたことが、一般の個人の手で可能なステージへと下りてきたことも大きな変化である。
 ジャンルに好みはあるものの、すべての音楽が嫌いという人は少ない。しかしまた、絵を描くことはその気になれば誰にでもできるのに、音楽を自分で作り、演奏し、記録して多くの人たちとこれを楽しむことができる人はごく一部である。デジタル技術は多くの人にこれを可能にする。本書は、デジタル機器を使って音楽制作を絵画制作なみに楽しむために、そしてこれらのシステムによって今までになかった音世界を創造できる可能性があることを示唆するために執筆したものである。
 本書が、多くの人のうちに眠っていた音楽性を目覚めさせる一助となればこれに勝る喜びはない。

2003年3月
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著者紹介
田上博司 たがみ ひろし
帝塚山学院大学アドミッションセンター副センター長
帝塚山学院大学文学部講師
ゲーム学会理事
情報文化学会会員
1954年大阪府堺市に生まれる
大阪府立三国ヶ丘高等学校を経て1977年神戸大学経営学部卒
大阪トヨタ自動車株式会社人事部を経て、1979年より学校法人帝塚山学院にて学校経営事務システム構築に従事する傍ら、コンピュータシステムのダウンサイジングとエンドユーザコンピューティングの研究を行い、DOSベースのオブジェクト指向型開発ツール「ASC」を開発。1986年、日本初の大型コンピュータを使わない学校基幹業務ネットワークシステムを誕生させた。その後、三菱電機株式会社のディーラー研修会講師として講演を行い、日本の諸企業のダウンサイジングを推進。
一方、高校時代より電子音楽に興味をもち、独自に研究・創作活動を進める。1982年、Roland社主催の世界シンセサイザーテープコンテストに入選。翌1983年には同コンテストにおいてアマチュア部門第1位入賞。1985年、Sound Worksよりアルバム「Cosmos Odyssey」をリリース。朝日放送ラジオ「東祥高のシンセワールド」出演。その他専門雑誌にも紹介される。
1998年、帝塚山学院小学校にて学校教職員に対するコンピュータリテラシー講習講師。2000年より帝塚山学院大学にて「パソコンとインターネットの基礎講座」講師。2001年帝塚山学院大学メディアセンター副センター長。
2002年より帝塚山学院大学文学部講師。同年、大阪電気通信大学を中心に創設されたゲーム学会に設立発起人として参加。現在同学会理事。また、関西市民大学講座、堺女性大学、大阪第6学区府立高等学校PTA研修会などにおいて講師を務める。
著書に「IT入門」(二瓶社)、「ITの英語」(NOVA)など。


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