食ったもんだ すったもんだ

  
落合武司 著
大阪在住の作詞家、放送作家の著者が仲間と発行し続けてきたミニコミ誌「ペンだこ」。ここに発表し続けてきた好エッセイ「食ったもんだすったもんだ辞典」を一冊にまとめた。
B6判・208ページ 定価[本体1200円+税]
ISBN 4-86108-001-0 C0095 \1200E
2003. 3. 31  第1版 第1刷

目 次

あ  あわび 3 / いわし 7 / うに 9 / えびがに 11 / おきゅうと 14


か  かれい 16/ きも 20/ くまざさ 25/ ケーキ 34/ コールコーヒー 42 


さ  さつまいも 48/ しょうがいた 51/ すきやき 54/ せんばじる 57/ ぞうすい 59


た  たこ 62/ チャンポン 63/ つけもの 65/ てんどん 68/ とびうお 72


な  なす 74/ にんにく 78/ ぬた 90/ ねぎ 97/ のしいか 106


は  はりはりなべ 112/ ひやごはん 117/ ぶどう 120/ へぎやき 122/ ホットケーキ 132


ま  まきずし 134/ みそ 138/ むぎちゃ 140/ めし 144/ もめんどうふ 146


や  やまかけそば 148/ ゆでたまご 151/ よしのくず 153


ら  ライスカレー 155/ りんご 162/ るいべ 164/ レーズン 170/ ロールキャベツ 178


わ  わきみず 181

はしがき 

 これは、グルメのガイドブックではありません。料理や食材にまるわる人生のあれこれを記したノンフィクションです。
 言うならば「心のレストラン」、そう、心のレストランにでもお越しになったつもりでいてください。
 シェフは私、落合武司ですが、食の専門家ではありません。本職は、脚本・作詞・放送作家・演出家……幅の広さだけが取り柄の男であります。
 職種の中の作詞だって、シモンズの「恋人もいないのに」から演歌まで、幅が広いのですが、各曲の主人公には共通点がございます。それは、自分を自分で癒してやって苦境から這い出そうとするいじらしさを備えているところです。
 私自身があきらめることを知らない人間だからかもしれません。「財布はたいて食べて呑んで、夜が明ければ昨日は昨日」。自分の作詞にそんな一行を入れるくらいですから、自分を癒すのがうまいのでしょう。こうなったのは二つの小説との出合いがあったからだと思います。
 まだヒゲも生えやらぬ若い日のこと。田宮虎彦さんの小説『足摺岬』の中の、年老いたお遍路さんのセリフにガツンとやられたのです。
「のう、おぬし、生きることは辛いものじゃが、生きておるほうがなんぼよいことか」
 自殺するために岬に来ていた苦学生は、死ねなくなってしまいます。
 それを読んだ次の日、椎名麟三さんの小説の数行にまたガツン!
 死にたくなったら、残っている金で旨いものをたらふく食べなさい。悲しみは半分になって、死ぬのは明日にしよう、ということになる。
 ││そういう意味のことが書かれてあったのです。
 これら二つの文章によって「今日一日、生きててよかった」と思おうとするようになりました。でも、そんなに毎日ウレシイことばかりあるわけがありません。
 が、(あ、そうや。旨いものなら何とか毎日、手に入る)と思いました。(一品でもいい、旨いもんが食べられたら生きててよかったと思えるんやないやろか。食卓に若竹汁が出る、あ、春が来たんや、あヽウレシ。ビワが出る、もうすぐ夏や、今年はどこの海に行こかな。まつたけが出る、秋やなァ、ハリハリ鍋がジャーンと鳴る、寒むゥ。そやけどもうすぐ春や! これだけでもええんやん、生きてな損や!)
 そういうわけで、父なしっ子の少年は旨いもんにこだわって明るく歩き出しました。
 そんな私の「食と人生」のフルコース、全44品、どれからでも、お好きな一品からお召し上がりください。(筆者) 





著者紹介
落合武司 おちあい たけし
子供のころ、映画監督に憧れたが邦画斜陽で断念。広告代理店に入り、CMや番組の制作をしながら作詞をも手がける。
◆作詞──「恋人もいないのに」「ふるさとを見せてあげたい」をはじめとするシモンズの連作や、西城秀樹、杉田二郎、浅野ゆう子、笑福亭仁鶴らのフォーク&ポップスから、大月みやこ、春日八郎、藤島桓夫らの演歌までオールラウンド。御堂筋パレードのテーマ曲「WE LOVE OSAKA」や奈良県のイメージソング「明日は花の海」(デューク・エイセス)摂津市民の歌「鳥たちよ川たちよ」(紙ふうせん)など公的ソングも多い。
◆演劇の脚本・演出──NO!と言えない日本の始まりを描く「情婦ジャポリーヌの始発駅」、近代日本の夜明けを描く大河もの「花の川〜花外楼お悦の生涯〜」、日本の老人問題を描く民話劇「たんとんとん」、アンデルセンの三作品を一本化した西洋の昔ばなしで日本の未来を考える「朝はどこから」など。
◆ライヴ──恒例のものとしては、歌と演劇による「歌のみちくさ120分」、3カ月に1回公演の朗読と一人芝居と歌による「こじんまりした歌謡祭」など、自作自演自演出で続けている。
◆──著書に子育てドキュメント「親馬鹿ちゃんりんそば屋の風鈴」(未来社)がある。

 日本音楽著作権協会会員
 日本放送作家協会会員
 日本脚本家連盟会員


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